―――――唐突だが、跡部景吾と言う男は幼馴染である樺地宗弘の事が超がつくほど大好きである。

 

 

それはもう物心つかない時からその姿を熱烈に眼で追う程で、さらにもっと言うと、眠れない夜を過ごしたことも幾度かあった。

 

 

さて、そんな樺地大好き男、跡部にはある計画があった。

 

 

 

それも、『次のバレンタインでは、絶対告白してやる!!』というものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜跡部景吾の策略〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の跡部はいつにもまして気合が入っていた。

今年のバレンタインは土曜日だったので、金曜日には既にチョコやら手編みの何かやらのプレゼントが莫大な人数の女の子たちから届いたのだったが、残念なことに今年の跡部にはそれをどう処理するかとかそういった気が回らず、中に何が入っていようと暖かい場所に置いたため(よってチョコは溶けた)、執事に注意された。

だがとにかく、跡部は自分のことで手一杯であったのだ。

 

 

―――――落ち着け俺様。樺地への連絡は済んでるし髪形も整えたし薔薇の風呂にも入ったしトランクスも薔薇柄だし、間違いのないように体臭までもがバラの香りになるというバラウォーターだって飲んだじゃねえか。部屋だって掃除させたしベッドメイキングも完璧だろ?だああああああなんだこの胸の鼓動は!

 

 

 

 

というのが跡部の心の中を一部引用したものであるのだが、わざわざ心の中を引用せずとも屋敷中を忙しなく回る主の姿を見れば―――

そして今日の来客が誰かを知っていれば、メイドたちにはそんな跡部の心境など察せられるものであった。

 

しかし長年仕えてきた執事やメイドに至っては、跡部と同じように何回も立ったり座ったりを繰り返すという始末で、跡部のことにまで手が回らない。

ちなみにそんな彼らの心中は前の通りに一部引用しておく。

 

 

 

―――――ああああ景吾様は大丈夫だろうか、一応万事上手くいくように3日前から樺地様と景吾様の登下校を見張っていたが特に問題はなかったし・・・景吾様のお食事にも一応気を使って体調を崩さないようにしてみたが・・・調子のってフランスシェフを30人も呼んだのは間違いだっただろうか・・・樺地様のお好きな牛丼をいつでもおいしく作れるようにと裏庭に臨時牧場を設置したのは間違いだったな・・・うっかり召使たちの寝泊まりする部屋と近くてくさいしうるさくて早速召使の何人かがノイローゼだしな・・・しかしうちの召使は神経質すぎるな・・・ああああそれにしても目が疲れている・・・昨日すべての部屋を樺地様のお好きな色(光の三原色)で揃えたら目がチカチカする大騒ぎだったし・・・調子のりすぎてベッドのスプリングを確かめようとジャンプしたら腰を打つしな・・・ああああそれにしても(ry

 

 

といった具合である。

一部で納まらなかったのを謝らせて頂こう。

彼らの心配が高速の渦のように迫ってきたのでどこで切ったらいいのかが分からなかったのである。

 

 

 

それほどにただいまの跡部邸は大変な緊張に包まれており、蚊が一匹でも紛れ込もうものならギッタギタのケチョンケチョンにされて跡部家の謎が隠されているという地下の暗闇に葬られることであろう。

もちろん泥棒が入った暁には、明日の朝日は拝めないと思ったほうがいい。

とにかく、跡部家の召使たちは主人の願望を確実に遂行することが誇りなのである。

 

 

 

さて、跡部が呼んだ時間どおりに樺地はやってきた。

樺地にとっては幼いころから通い続けている跡部の家ではあるが、出迎えてくれる執事やメイドにお礼や挨拶を言うのを忘れない。

ただしいつもは穏やかな笑みで迎えてくれる老齢の執事が、今日は何時になく肩で息をしながら出迎えるのには驚いて、首をかしげてしまい、挨拶を忘れてしまった。

 

 

そして跡部の部屋に通されるなり執事とメイドは風のような速さで跡部の部屋を出て行き、樺地は跡部と二人取り残された。

 

――――何か、忙しい、のかな?

 

忙しさの原因がまさか自分にあるのだと思いもしない樺地は、まずい時に来たかなあと不安に思った。

だがそんな樺地の不安も、次の瞬間吹っ飛ばされた体と共に、どこかへ吹き飛んだ。

 

まず樺地が驚いたのは、自分の巨躯が浮き、何かスプリングの効く物に包まれたということだ。

そして次に驚いたのは、自分の上に、いつになく目をギラギラとさせた跡部が居ることだ。

しかもよくよく観察すると、鼻息が荒い。

そしてよくよく見ると、樺地と跡部が今居るのはベッドの上だ。

 

 

 

ここまでくれば、誰が見てもこの状況は一目瞭然だ。

 

 

が。

 

 

 

 

 

――――もしかして、俺、怒られる、かな。

 

 

 

 

 

 

この樺地と言う男は、鈍かった。

どこからどこまで、とことん鈍かった。

何と言っても、あの跡部の強い眼力をもってしても、その視線に気づかない男なのだ。

そして跡部がさりげなくボディタッチをしても、平然と受け止める男なのだ。

さらに跡部が「ちょっとお前の下着貸せよ」とか言っても、平気で貸してしまう男なのだ。

もっと言えば「たまたま俺様には大きすぎる時計があったんだ」とわざわざ『M・K』というイニシャルの入ったカル○ィエの時計(想定金額一千万円)を貰っても、

 

まあそういうこともあるのかな。

 

で済ませてしまうほどの男なのだ。

 

跡部の手が樺地の太股をまさぐっていようとも、全くその意図に気づかない。

それほどまでに見事な樺地クオリティの前に、むしろ跡部はやりたい放題だった。

 

「なあ、樺地・・・・?」

 

どこから出てるのか不思議なぐらい低い声で、跡部は樺地の耳元に囁く。

それでも樺地は、純粋の光を湛えた瞳で跡部を見上げた。

さらには「何か跡部さん、良い匂いするなあ」とか呑気にも思っているのだが、それが跡部が今日の為に飲み続けてきたバラウォーターのためなどとは樺地には思いもよらない。

 

 

「俺様は、常に完璧だ。」

 

 

怒られないのだろうかと思いながら、樺地は跡部のその言葉に頷いた。

 

 

「だが、俺様には、一つだけ手に入れてないものがある」

 

沈んだような跡部の声(もちろん演技)に、樺地は軽く目を見開く。

 

――――え?跡部、さん、でも?

 

そんな樺地の様子を見て跡部は内心でほくそ笑むと、緩慢とした手つきで樺地の服を脱がしにかかった。

 

 

「・・・知りたいか?」

 

息を吹きかけるように囁くと、樺地はしばしの沈黙の後に「ウス」とだけ呟いた。

 

 

 

 

 

――――よし、言え!俺様!!

 

 

 

 

筋書き通りの現実に跡部は心中で高笑いをして、手汗でぬれる手のひらをぐっと握りしめた。

 

慎重にだ。慎重にやらないと獲物は逃げる。

跡部はこの上なく慎重な手つきで、樺地の顎を捉え、言うべき一言のために口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガサッ

「「・・・?」」

 

 

ガサッ・・・・・!?だあ!?!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!?

 

 

 

 

 

跡部はこの雰囲気を邪魔した音の正体に向けて鬼の形相で振り返ると、何ともかわいらしい袋が樺地の手に握られているのに気付いた。

樺地は跡部のその視線に気づいたのか、「あ」と短い言葉を発して、跡部にその袋を渡した。

 

 

 

「・・・・・あ?」

 

一方跡部は、これから!って時に思いっきり音が鳴った(おそらく何か重いものが入っているのか)その袋を樺地に手渡され、若干の放心状態に陥った。

「バレンタイン、の、お菓子・・・です」

 

 

樺地にそう言われ、ああ、と頭の片隅で思った。

 

 

 

 

――――そうか、バレンタインの、な。なるほどな。結構な音したからな。きっとこいつの事だからケーキとかだよな、うん。落ち着けよ、俺。うん。だからつまり、なんだ、これはあれだろ、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

この計画は、失敗ってことだろ?(跡部景吾、心の涙)

 

 

 

 

 

 

そこまで思い立って、跡部は人知れず涙を流した。

体すべての力が抜けきったような跡部は、全てを知っているものから見ればあまりに哀れであった。

だが生憎と人払いのためにここにはそんな人物はおらず――――

おらずといっても、扉の向こうにはコップを用いるという古典的な方法でなんとか跡部と樺地の会話を盗聴しようという面々が列をなしているのだったが、そんな事など跡部に分かろうはずもなかった。

 

 

 

 

 

だが、それでも。

 

 

 

「あと、べさん・・・?食べません、か・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

所詮、跡部は樺地には勝てないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だあああああああ!もう!!」

 

「!?」

 

「食べる!食べればいいんだろ、ああ俺様の負けだよ!」

 

「ウ・・・?」

 

「その代り・・・来年は覚悟してろよ、樺地」

 

「???」

 

 

 

一年はまだたっぷりあるというのに、それでも来年まで待とうと思うのは、今日が愛の日だからだ。

 

 

 

2月の14日。

 

 

 

それは、愛の告白にはうってつけの日なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがきのおまけ。

 

 

 

忍足「つまり、シチュエーション萌えなんやなあ、跡部」

宍戸「・・・なんだよそれ」

向日「ってかゆーし、このチョコなんだよ!」

忍足「あ、それは唐辛子が中に入った『あつっ!?からっ!?どっちチョコ!?』ゆーて―――モベフ!!!

向日「いってーーーーー!!!人殴るといってーのな!くそくそいってー!」

宍戸「お前に罪悪感はねえのかよ!」

鳳「あ、宍戸さん!!あの、今日―――」

宍戸「チョコなら無えぞ

鳳「――――え!?し、宍戸さん、今日何の日だか知ってます!?」

宍戸「ああ!?だからチョコはねえっつってんだろ!言っとくけど、お前からもらってもホワイトデーは返さねえからな

 

 

滝「・・・日吉、宍戸に教えに行ったら?今日が鳳にとってどんな日か」

日吉「いやですよ。滝さんが行ってきたらどうですか」

芥川「チョコおいC〜!」

日吉「ってか忍足さん、大丈夫ですか?―――ダメそうですね、救急車と霊柩車、どちらを呼びます?

忍足「なんでやねーん俺はまだ無事やろが!どう見ても!!!」

日吉「顔の半分紫色なのに?

忍足「岳人の愛のパンチや!むしろ岳人と二人で教会でもええな・・・二人でバージンロードを歩くねん」

日吉「ああ、なるほど。もう直接教会に行ってしまいたいんですか。じゃあ急ですけど墓穴用意しますね。忍足さんは横たわるだけでいいですから

忍足「それ葬式ちゃうん!?日吉!?俺お前になんかしたか!?」

日吉「いいえ?別に。前に俺と向日さんがダブルス組んでた時に忍足さんが嫌がらせで俺の鞄に『放課後の保健室での危ない授業』なんて少女漫画入れたことなんか、

ぜんっぜん根に持ってませんけど?            

忍足「そっ・・・!それは・・・!!!」

日吉「でも女子ってこういったことはいつまでも覚えているんですよね。本当に。先輩でなかったら家にある薙刀で刺してる所なんですけど

忍足「ひっ・・・日吉・・・悪かった!悪かったってホンマ!!!モベフ!!!!

 

 

日吉「―――眼潰しって結構痛いんですね。覚えておきます。」

滝「・・・日吉、それ眼鏡だよ・・・」

忍足「(助かった・・・・!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

推敲してこれなんですか、私。

いいんですか樺跡の神様、こんなグダグダで。(知らんがな)

 

 

 

ってか日吉のキャラが違いすぎてごめんなさい。

またもごめんなさい。

ってか、跡部・・・・!!!!

 

 

 

えー・・・・

 

 

 

とりあえずここに来て下さる方に愛をこめて!!!

(↑誤魔化した!)

 

 

 

 

 

で、では!!