いつからか、こうやって居るのが当たり前になって。
何も言わなくてもそばに居るお前。そしてそれを従える俺。
言えば何でもするお前。言わずとも通じる俺。
――――――なあ、そろそろ俺にも我慢の限界ってものがあるんだが。
+ + +
部長でもあり、生徒会長でもあり、絶対な強さを誇る跡部景吾を尊敬する者は少なくない。
決して言葉にこそしないが、傍で彼の活躍を見てきたレギュラー陣もまた然りである。
――――だが、流石にキャパシティーはあるもので。
「俺様は・・・・抱かれる魅力がないか?」
樺地だけがなぜかいないレギュラー部室。
アンニュイな様子の跡部の口から突然発せられたのは、そんな言葉だった。
その場にいたメンバーは(何回も言うが、何故か樺地だけいない)その言葉の意味を脳内で反芻しては、冷や汗をかいて閉口する。
そして巻き込まれぬようにといつもより何十倍もの速さでレギュラージャージに着替え、逃げようとした。
が、所詮この俺様絶対至上主義のような男から逃れられるはずもなく。
「なぜ黙る!!」
獅子の咆哮のような叫びに誰もが動きを止めた。
「や、だってどう答えたらええんかわからんし!」
真っ先に逃げようと入り口付近に居た忍足が応える。
「そもそも質問の意図が分からねえよ!!」
さらに忍足に次いで逃げようとしていた宍戸が応えた。
「どうせ、あのバケモノのことでしょう・・・」
「全くクソクソ迷惑だぜ、こっちはよー」
さらに日吉と、その日吉に絡んでいた向日にも言われ、跡部はぐっと黙るしかない。
そして次の瞬間、ジローの発した言葉が、跡部を含めた誰をも凍らせた。
「なになにー?もしかして跡部樺地に何もされてなEー?」
ビシッ
擬音がつくなら、まさにそれが相応しい。
何せいつでもどんな時でも、決して自身が凍ることはない跡部景吾という男の動作がぴったりと止まってしまったのだ。
そんな跡部の様子を見てしまっては、周りの動きが止まるのも自然なことだ。
そして、全員が感じたことは。
―――――図星だ!!
「馬鹿、ジロー!!怒られるぞ!?」
真っ先に跡部の異変を感じた向日が小声でジローに叫んだ。
続いて我に返った宍戸も小声で叫ぶ。
「ってか殺されるだろ!そういう事は思ってても言うなよ!!」
「でもジローにしては・・・やるねー」
「滝そんな悠長なこと言うてる場合とちゃうで!?あああああ氷の世界見えてるし!!
そして誰もが波乱を予想した、その次の瞬間。
「――――・・・そうだ」
―――――・・・・・・。
「「「「「?」」」」」
「あら・・?素直に言いよった」
「何か意外だな」
小声のままでいう忍足と宍戸に続き、日吉が答える。
「否定してみっともない姿をさらすより、潔く認めてしまったほうがいいと思ったのではないですか?」
「なるほどな・・・くそくそすごいぜ、日吉・・・」
「なあ・・・どう思う・・・?俺様には魅力がないか・・・?」
跡部にしては珍しくしおらしいその様子に、部員は首を捻って考える。
「って、言われてもなあ・・・」
小声で忍足が呟くと、向日が続いた。
「ぶっちゃけ、抱きたくはねーだろ」
「跡部部長、体結構鍛えていますからね・・・」
「背も結構高いですし!」
「ま、樺地相手にどう映るのかはわからねーが・・・まず男同士でって点を誰か突っ込んでくれよ」
宍戸がそう口にすると、滝は微笑んだ。
「いやあ・・・跡部の頭にそんな常識的な概念はないと思うよ?今も・・・そしてこれからも」
「じゃあ正してやれよ!!!」
「ごちゃごちゃうるせえぞお前ら!!さっさと答えろ!!」
小声でゴニョゴニョと話していた部員達にとうとう痺れを切らした跡部が吠える。
「うーん、せやな、結論としては・・・」
「「「「無理だろう」」」」
「・・・・!!!!」
言葉もなく立ち尽くす跡部に、部員たちから容赦ない言葉が次から次へと降りかかる。
「だってよー、あんだけ力強く球打ってんだぜ?筋肉すげーじゃん」
「まあ岳人に比べたら力の差は仕方ない・・・ちょ、岳人、待って!ほんまに止めてソレ!」
「どんなにお世辞言ってみても、可愛いでないことは確かだぜ」
「そうですね、宍戸さんならともかく!」
「ちょ・う・た・ろ・う?」
「ひいいいいいいいいすみません!」
「あのバケモノの好みは知りませんが・・・見るからに普通の趣味してそうですしね」
「そうかなあ、男子であれだけ家庭科得意なのって樺地くらいのもんじゃない?いいんじゃないかな・・・・跡部の嫁・・・・って感じで」
「滝さん、そっちは・・・ちょっと・・・・」
「って・・・・・めえら・・・・」
グッとこぶしを握りしめ怒りに震える跡部に誰もが我に返った。
まずい。
跡部が怒ってる。
とっさに動いたのは忍足だった。
「いや、ほんまに俺ら、お前ならいけると信じてるわ!」
「さっきゴチャゴチャ言ってたのは何だ!」
「だから樺地なら大丈夫だって!クソクソ優しいし!」
「優しいからなんだっていうんだ!」
だが向日が参戦してもうまくいかず、誰もがフォローの言葉を考えるが、なんというか、口から出てこない。
仕方ないのだ、だって、彼らは男の子だから。
絶大な強さを誇り、誰をも屈服させ、圧倒させるその男を抱けるか、と聞かれたら。
思わず「・・・。」になってしまう訳で。
とうとう跡部が部室を破壊するか、と誰もが覚悟を決めた瞬間。
ジローが半ば寝ぼけながら、こう言った。
「じゃあ、逆でもEーかも・・・」
「「「「「!!!」」」」」
何がだ、何が逆なんだジロー!
真っ白に燃えつきたいのかジロー!
というか跡部が固まっていないかジロー!
跡部の変なスイッチお前まさか押したんじゃないかジロー!
っていうか、逆って何だーーーーーー!!!
「・・・・ふっ、フフフ・・・・
ファーハッハッハッハアアア!」
突然変な笑い声を出した跡部を、誰もが引いた眼で見る。
「そうか・・・・そうだよな・・・・そう言う手もあるわけだ・・・・・この俺様としたことが、どうして気付かなかったのか・・・・!!!!」
あわわわわわわわわわわ。
もう取り返しのつかない状態になった部長を見ながら、部員はおびえた。
その時忍足は、前に跡部の担任が漏らしていた一言を思い出していた。
『跡部君はね・・・もう・・・手遅れなんだよ』
そうか、あいつ、もう手遅れなんや。
それが何とは思わなかった。
ただ、何となくわかる気がしていた。
そうだ、あいつは『手遅れ』なのだと。
「今日は寝かさねえぞ樺地・・・・・待って居やがれ!!!!!」
…樺地。
ご愁傷様。
その場に居る誰もが―――ジローを除いて―――ここにはいない樺地に、静かに合掌したと言う。
+ + +
跡部「―――・・・・で、」
樺地「ウ?」
跡部「何で今日っていう日に限ってパーティーなんだよ!」
樺地「・・・ウ・・・・」
跡部「いいんだよこっちの話だから、でも何でだよ、何で今日なんだよ!誰だ!誰の仕業だ!!」
樺地「気を、つけて」
跡部「ああ!?」
樺地「最近、物騒・・・だから」
跡部「ハッ、なんだお前、この俺様がそこらの犯罪者に殺られるとでも思ってんのか?この俺様だぞ?」
樺地「で、も」
跡部「あ〜ん?」
樺地「跡部さん・・・・素敵だから」
跡部「・・・・・・え」
樺地「じゃ、気をつけ、て・・・」
跡部「お、おいこら待て!どこ行く樺地!!!オイ!!!」
跡部「(・・・・・余計行き辛くなったじゃねえか・・・・・!あんのバカ!)」
もしかしたら逆でなくてもいいのかもしれない、そう顔を赤くしながら思った跡部景吾であった。
あとがき。
ルルル〜瑠璃色のchikyuu〜
どうも、ぺーです。
ギャグにしようと思ったら不完全燃焼だよ!
まあこういうことってよくあります。
樺跡の魅力を最近いろいろと考えているんだが、樺地が動かなきゃ跡部が動かないような気がしてきた。いや、動けないような気がしてきた。
とりあえず思うのは、跡部は樺地を大好きなんだろうという事だ。
まあそれはもうオフィサルですよね!オフィ猿。
ただ、この場合の逆って、跡部のイメージから行くと、跡樺とかじゃなくて襲い受けっぽい感じだったかも。うーん、ホモ百合か。(8●1ちゃん)
でもきっとこれぐらいの勢いで氷帝のレギュラーは巻き込まれているんだろうなあと思った。
だって相手はあの跡部景吾だからだよ。(笑)
しょうがないのだよ。
さて、あと未解決なネタがいくつも眠っているのですが、お披露目できるのは何時になる事やら。
待ってる人なんかいないと知ってはいても、とりあえずお待ち下さいとは言っておきます。
「待ってねーよ!」という方には謝ります。毎度お目汚しすみません。
後は原作でも読んで目を洗ってください。
いいよねー樺跡(逃避した!)
ではでは、お粗末さまでした!