※Caution !!
跡部女体化です!
色々おかしいところがあります。一人称が「私」のくせに口調が男っぽい、など・
しかも、オンリー跡部にょたです。岳人は……男の子なんだと思います。ええ、イリュージョン←
こんな無茶苦茶な設定でもよろしければ。
昔、昔、そのまた昔。
天の国王が天上界を支配していたころのお話です。
君と僕の始まり
「ガクトお…わが娘ながら…こう…なんやろ、なんか、恐ろしいねんけど…」
「うーん…ユーシの育て方が悪かったんじゃねえの?」
黄金の玉座に座りながらポソリと呟くのは、少し長めの黒髪を銀糸で出来た外套に映えさせる、天王、オシタリ。
そしてその言葉を受けて孔雀の扇子を乱暴に仰ぐのは、桃色の髪を金糸で出来た外套に映えさせる、天后、ムカヒであった。
そして、彼らの視線の先に居るのは。
「ファーッハッハッハ!!!私に勝とうなんて100億光年早いのよ!」
緩やかに波打つ金茶の、豊かで長い髪を結いもせず無造作に揺らしながら、自らの体躯の何倍も大きな体をした男を金の深靴で踏み散らす、切れ長の双眼が鋭利に光る美少女―――皇女アトベであった。
踏まれている男は悔しさと幾許かの快感が混ざったような表情を浮かべて地面に頬をつけたままなのだが、アトベからはそんなものが見えようはずもない。
だがバッチリ、男の様子もアトベの様子も見えている天王天后両陛下は、憂いげな溜息を隠す様子もなく漏らした。
今天上界で問題なのは、男(おのこ)のような強さを持ったこの鮮麗な長女、アトベの婚礼のことである。
+ + +
「ええか、今日という今日は!大人しくしててや!!」
「うっさい。」
娘の部屋でみっともなくひざを折り曲げて頼み込んでいる父親のオシタリを一瞥して、アトベは舌打ちした。
彼女の不機嫌の理由は、様々である。
先ずは、いきなり「お見合い」―――つまり、父親の決めたどこの馬の骨とも知れぬ相手と会う、それも何か話をして―――という事がアトベには無断で設けられていたことである。
さらに、普段アトベが好き好んで来ている膝丈で半袖の動きやすい狩衣用の装束が衣裳係のタキとヒヨシによってしまわれていることだった。
彼女が今着ているのは、まさに皇女というのがよく似合う、長い裾の、色合いの柔らかい外交用の衣装であり、彼女が不機嫌そうに眉をひそめ、舌打ちなどしていなければ、アトベの豊かで柔らかな髪にも、白皙で端正な顔にもそれはよく似合うものだった。
そういった衣装を、アトベは面白がって着る事はあっても、たとえば男をオトすために使ったことなどないし、そもそもアトベは男というものをどこか軽蔑しているところがある。父親が悪かったと言えばそれまでだが、彼女を打ち負かした男が居ないせいもある。
女は物腰柔らかく男は猛々しく、というのは天上界でも通念ではあったが、猛々しいはずの男に負けたことのないアトベにとってみればその考えが不思議でしかたなかった。
だから、どうしてわざわざ自分の弱い相手と結婚しなければならないのか分からず、これまでウザいくらいに父や母から持ちかけられる縁談をことごとく断ってきた。
だからもちろん、タキやヒヨシを脅してでもこんな衣装は着ないと言うつもりだった。
もし返してくれないなら、この装束を引きちぎって全裸ででもいい、とまで跡部は言った。
だがタキよりも後にこの天宮に来たヒヨシは少し慌てる様子を見せたものの、幼い頃からアトベの世話をしてきたタキは、動じる様子も見せず、「なら今まで縫ってきた狩衣…あれも破っていいんだよね?あと大事にしてた弓と矢もあずかってるんだけど…それも壊していいってことだよね?」と逆に脅し返され、アトベは返す言葉に詰まった。
昔から、この腹の読めない召使には叶わなかったことを改めて思い出す。
肉体的にではないが、精神的に、アトベが男に負けているとしたらタキことであろう。
さて、八つ当たりも甚だしく、怒りの矛先は当然全て父親に向いた。
よって彼の、「ザンシュの神器」―――どうでもええけど、ザンシュてなんや斬首みたいで嫌やな、とオシタリは洩らしていたが―――の内のひとつ、「ダテメガネ」は、こなっごなに粉砕されて、下界へと続く『雲の通路』に落とされた。
その突然落ちてきたガラス片よって下界の人間は甚大な被害をこうむったが、天上に居る者たちから、残念ながらその様子は見えなかった。(天上は太陽に近いので、大体の視力は0.02。)
さて閑話休題。
お見合いはあと数刻で始まろうとしている。
が、アトベは勿論このまま出る気にはならなかった。
――――逃げるか。
狩衣がタキの手にあるのは痛いが、一生の問題と考えればどうにでもなる、ような気もしていた。
とりあえず「緊張してるから一人にしろ」と父親のオシタリに言い、「明らかに緊張なんてしとらんやろ…まあもう父さんを殴らんならええけど」「それ以上無駄口叩いたら殴る」「ヒエエ!」という会話をして一人になったアトベは、裏の窓からの脱出を試みた。
だが生憎、アトベの部屋は天宮の東塔の頂にあり、縄かなにかが無いと下には降りられそうもない。
飛ぶという方法が無いわけではないが、高さが違えば相当体力を使う。
ではどうしようか、と考えて、跡部は下を見降ろした。
と、天上人にしてはめずらしく視力の良いアトベは、下の大地が桃の生える、天上界でも一部にしかない神聖な土地であることを知った。
――――大地の力、そうだ、桃ならきっと…
桃は神の力を増強させると信じられている。そのため、桃の木から魔除けの札が作られたり、酒を造り出して力のないものが飲んだりする。
その桃が群生している土地が眼下に広がっているという事は、あの大地は相当神聖で、尚かつ、通常の大地より力を持つはずだ。
――――と、なったら…まずは飛び降りて、地面に着く前に呪で大地を変えるしかないか…
通常の大地は変形しても、高いところから落ちてきた物体を受け止めるほど柔らかくはならない。
だがその大地はおそらく強大な力を持っている。
それに、天上の物は全て、自然と主に従う。
普通主といえばオシタリのことであるのだが、アトベはオシタリを天上の主と考えてはいなかった。
普通の娘なら確実に怖がるであろう高さをもろともせず、窓辺に手をかけアトベは大地を見下ろす。
繊細な心が無いというものは、時に短所で、時に長所だ。
よし、と一息だけ吐いて、アトベはぐっと腕に力を込めた。そしてそのまま、飛ぶようにして落ちていく。
怖いとは思っていなかった。
ただ、意識だけは集中させていた。
風の抵抗を受け、それでも落ちながら、アトベは手を組んで呪を唱え始めた。
と、ここでとんでもないものがアトベの目に飛び込んできた。
――――だっ…!誰か居る!!!
それはまさに桃の木が風に吹かれ、枝が靡いてその下を顕わにした時だった。
桃の花で見えなかったが、確かにアトベが今から落ちようとしているところに、アトベよりはるかに大きいと思われる巨体がその姿を現したのだ。
――――あそこの地面を変形させれば確実にあいつは埋まっちまう…!かといってこのままだと、
ぶつかる、と思った時にはもうすでに遅かった。
呪文を唱えるのも間に合わない。
アトベはええいままよ、と口の中だけで呟いて、風でひきつる頬を動かして叫んだ。
「あぶないっ!!!」
「え」と緩慢な動作でこちらを向いてきた瞳が、純粋な光を堪えていることだけをみて、アトベは、その光と正面衝突した。
+ + +
死んだ、と思った。
いや、殺した、と思った。
が、痛みに顔をゆがめていると、「ウ…」という声がしたから聞こえてきて驚いた。
咄嗟に体を起こし、下敷きにしていた体から退いた。
「ちょ、ねえ!大丈夫!?」
肩をゆすって反応をうかがうと、かろうじて眉を動かすのを見て、アトベは息をついた。
それにしてもなんという強靭な体だろう。
上から落ちる間に見た時も巨躯だとは思ったが、改めてアトベがまじまじと見てみると、それは本当に大きく、そしてたくましい。
そして筋肉が隆起する腕は力強く見えた。
この腕が、まるで抱きとめるかのように動いたんだ、とアトベは思い返した。
と、思い返したところで何だか顔が熱くなるのを感じた。
先程まで安否を気にして血の気が引いたのに、今度は熱くなるなんてどうしたんだろう、とアトベは困惑した。
ぎゅっと細い腕で自分を抱きしめてみる。
いいや違う、と思った。
もっと力強く、受け止めるように、抱き締められた。
そんなことは初めてだった。
――――な、なんだよ、心臓はうるさいし、
アトベは服の上からでも震えているのが分かる己の心臓に手をあてて、治まれ、と念じた。
きっとこれは、そう、死ぬか死なないかの体験をしたから。
そういいきかせて、それでも未だ高鳴る心臓に、アトベはまるで体全体が心臓になったかのような錯覚を覚えていた。
と。
「アトベーーーー!?今の音なんやねん!?」
「っ、げ!」
どうやらすさまじい音を聞きつけて駆けつけてきたらしいオシタリとムカヒが、こちらへ走ってくるのが見えた。
逃げるか。
そう思ったが、目の前で浅い呼吸を繰り返す巨体を見てとどまる。
ここにいなければ。彼は、自分が傷つけたのだから。
そんな感情を覚えるのも初めてで、アトベは自分でも驚いた。
慈悲の心がないとかよく言われてきた自分が、どうして―――――
と、アトベは急に、先ほど見た瞳が見たい、と思った。
純粋な光を堪えた瞳だった。
そして、恐らく最初で最後に見る目に違いない、とも思った。
だから、アトベはオシタリやムカヒが近付いてきても気にしなかった。
というより、眼中になかった。
オシタリの、とんでもない一言を聞くまで。
「ああああああああっ!カバっちゃん!カバっちゃんやん!!!!!」
――――カバッチャン?
とうとう気でも狂ったかとアトベはオシタリを見たが、どうやらそうではないらしい様子に胸騒ぎを覚える。
一方のムカヒも、驚愕に目を見開いていた。
――――ま、さか、まさかまさかまさか。
この、巨体の男が。
――――まさか。
胸がひときわ高鳴ったのは、驚きのためか期待のためだったか。
オシタリの声を聞いたためか、その男の瞼が苦しそうに持ち上がった。
――――やっぱり、光っている。
アトベはどうしてか、笑いそうになった。
+ + +
「本当は、死ぬかも知れなかったんですよ」
天上界で随一の腕を持つと評判の医者であるオオトリは、隔離されている西塔の病室に入ってきたアトベを見るなりそう言った。
「陛下から聞きました。この人が、例の、」
そう言ってオオトリがアトベの顔色をうかがうのはつまり、アトベが見合いに対して反抗的であったのを知っているからだろう。
もしかしたらこの病室に、男の怪我を酷くするために現れたのかもしれない、とでも思っているのか。
真意は伺えないが、アトベは早く会いたくて、なんとか信用を貰えそうな演技をした。
そう、多分、この言葉なら。
「そう、私の、婚約者。」
「あー…。…………って、ええええええええええええええええええええええええ!?」
ニコリと笑えば、オオトリは驚愕の余り何も言えないようだった。
「…具合はどう?」
混乱しているオオトリをうまい具合に誘導して、病室に二人っきりという状況を作り出したアトベは、寝床に横たわる男に聞いた。
「ウ、!」
予想通り驚いた声がする。
うん、やはり、大地のように安心する声だ。
アトベは逸る胸を左手で押さえて、一つの布の向こうに居る相手に会いたい気持ちを抑えた。
「…そっち、いい?」
控えめに尋ねれば、上ずった声が出たので驚いた。
口を手で押さえると、柔らかい声が届く。
「…ウス」
その一言に、胸が一際大きくなった。
おそるおそるアトベが覗きこむと、『カバジ』は下半身は布団に入れ、上半身だけ起こしている状態だった。胸に巻かれた包帯が、服を着ていないことで顕わになっている。見るからにいたそうだ。
「あの…ごめん、なさい」
最初に謝罪をすると、相手は驚いたようだった。
アトベは皇女で、カバジはどうやら中流貴族の息子らしい。
ならばアトベは身分的に、謝る必要はないのだ。
ただ、それでもアトベは謝りたかった。
今まで誰にも、感じたことのない気持ち。
罪悪感だとか、そして、この、
「べ、つに…アトベ様が…謝るような、ことでは、」
「様は」
「ウ?」
「様はなし」
「ウ…」
「命令」
「……ウス」
躊躇いの後に頷いたカバジの様子に笑って、アトベはカバジの寝床のわきに腰かけた。
そして、気になったことをひとつ。
「その…どうしてあの時、」
桃畑に?
と聞こうとすると、カバジが先に応えた。
「桃畑…ですか?」
これには少なからずアトベは驚いた。
「なん、で」
カバジも不思議そうに返す。
「わ、かりません。で、も、なんか…」
いま、声が。
そう言ったカバジに、跡部は驚いたが、けれどどこかで納得した。
自分も、なぜだか、分かる気がする。
「カバジ」の、声、が。
「…桃畑にいった、のは」
そう言うと、カバジは、寝床のわきに置いてあった一房の桃を取り出した。
「噂で、美しいと、聞いてて、なら、」
「似合うと思ったんです」
そして、アトベの髪にさして、一言。
「やっぱり……可愛い、です」
――――ああ、純粋の光を堪えた瞳が、
(ほほえ、んで)
アトベは、今はもう廃れたという天上界の教会の鐘が、頭上で大きくなったような、気がした。
|後記|
女体化、しっっっっ、ぱい……☆←
天上界というファンタジー!
ってゆうかみんな誰だよ!?
本当にすみません
とにかく絶対推敲しなおしますので本当にすみません
とりあえず…許してあげてください…←
後編に続きます!!!!!
では!!!!!