「アイツが俺様から離れられる訳はねぇんだ」
部室であの人が、言っているのを聞いてしまった。
「―――アイツが必要としてるもの全て、俺様が持ってるからな」
「例えば?」
答える声は、向日さんのだろうか。
「―――例えば…アイツの口座」
「はぁ!?」
そしてこの声は多分宍戸さんだ
「名義はアイツだが、俺様が許可しねぇと下ろせねぇセキュリティーになってる」
「「「「「「なっ…………はああああああああ!?!?」」」」」」
全員の声が重なったと思ったら、瞬く間に喧騒に包まれた。
「お前どんだけヒドい奴なん!?金か!樺地はお前に金握られとんのか!」
「最低だぜクソクソ跡部…!」
「マジマジ樺地可哀想!!!」
「お前人間として最低だと思わねぇのかよ!?」
「宍戸さんに同じく、俺もそう思います!」
「っつーかタダでさえお前んち金有るんだから別にいらねぇじゃねぇか!」
「俺もそう思います!」
「てめえに自分の意見はねえのか長太郎おおおおおおおおおお!!!」
「しっ、宍戸さん!?何怒ってるんですか!?」
「最大の権力は所詮金…ってね。やるねー跡部」
「アイツがどうなろうとどうでも良いんですけど、それって犯罪には触れないんですか?」
などなど。
と、
「…ったくうるせぇ奴らだ。ちげぇよ、口座が二人分だって言ってんだ」
そう、と俺はドアの向こうで頷く。
「………二人分やと?」
「だから、樺地の貯金と俺様の貯金が、同じ口座に入ってるって言ってんだよ」
「「「「「「…え゛?」」」」」」
「…そ、それはそれで…どうなんだよ?」
「っつーか…ヒドい男やな、お前……」
うんうん。
と頷く、全員の声が聞こえるようだった。
ヒドい男。
果たしてヒドいのかなぁと思う。
口座が一緒、とは言っても、それは樺地からお願いしたと言っても良い。
冗談混じりに提案してきた跡部の案に、じゃあお願いしますと返したのだから、結局は自分の蒔いた種なのだ。
――――それ、に
自分だって、例えば誰にも見せられないような写真とかを持っていて。
彼はこれから世界でも注目を置かれる程の存在になるのだから、そんな写真はもしかしたら捨てた方が良いのかも知れない。
もちろんそんな事を本人が聞いたら、『俺様は脅しになんか屈しねぇ』と言うのだろうが。
まるで切り札のように持っていて、離せない。
何か相手にとって大きな物をもっていなければ、自分は。
――――それ、は、でも『ヒドい男』なのではなくて、
「ああ、来たか樺地」
「………ウス」
――――ただの、臆病者なのだ。
自分も、彼も――――
|後記|
はい意味の分からなかった人手ぇあげてー!
あ、全員ですよねすみません(コラ)
つまり樺地と跡部は、なんかもう周りからは考えもできない大きい物を共有してたら萌えるなぁと思ったのです
んで、お互いそれを手放せない臆病者なんだよ、みたいなネタ。
ズルいとかヒドいとかより、臆病なんです。
さて、気が付いてる方もいらっしゃると思いますが…!
今回は、跡部の想いに気付いてる黒樺地です…!
いや全然ダーク要素なかったですけど!?(笑)
初挑戦で浮かれてしまいましたが…
黒樺地!
…次はもっと研究してきます←
両片想いみたいな具合で。
いつかくっつくと思うんですけど、このパターンはややこしそうですね←
ではでは!