また明日、の時間は

「―――むねひろ」

「……もう、帰るのか」

またがある、とは知っていても

「…うん」

でも

「ふーん…」

寂しくて。

「あした、じゃなくて」

「…う？」

「全部が今日なら良いのに」

「…」

さびしいさびしいさびしい。

もしかしたら明日だって、会えないかも知れないのだ。

大事なのは、明日じゃなくて今なのに。

明日まで、待てない。

「―――けーごくん、」

「や、くそく」

「―――『やくそく』…？」

「うん」

「俺と、むねひろが？」

「うん」

「何を？」

「―――明日、また会うよ、って」

（………）

「あたりまえだ、ばか…」

「う…」

「またあした会うから、『またあした』って言うんだろ」

「う…！」

―――でも、

「………針せんぼん、だぞ」

「うん」

「やくそく守れないヤツは」

「うん、」

「いいな」

「う、ん！」

小さな小指と小指を柔らかく絡めて。

「「また明日」」

必死に、約束をした。

＋　＋　＋

「…また明日な」

予想通り、驚いたような顔

「あ、とべさ…？」

「なんだよ、そんな顔すんじゃねぇ」

「ウ…」

「まぁ変だよな。…あの時は―――」

あんなにも必死に、明日の約束を取り付けたのに

「…いや、変だったのは昔の方か？」

「ウ」

そう、もう『また明日』など要らない

「―――約束だ、樺地。また明日な」

「…ウス」

「針千本だぞ」

「ウス」

「約束守れないヤツは」

「ウス、」

「いいな」

「ウス！」

そうして小指を出した樺地を、跡部は笑った。

「馬鹿、もうガキじゃねえんだ」

「ウ…」

真っ赤になって謝ろうとする樺地の後頭部を掴んで、跡部はこう言い放つ。

「大人には大人の、約束の仕方があるだろうが」

何、と聞く前に、とりあえず樺地は言葉を発せなかった。

「――――…じゃあな」

そうして帰って行く跡部の背中を見ながら、樺地はしばらく立ち尽くした。

唇に残る良く知った香りに混乱する彼は気付けない。

―――颯爽と去った跡部の顔が、夕陽より赤い事に。

｜後記｜

うわーーー！！！

酸いも甘いも噛みしめた奴らめ！！！（自分で書いておいて）

最初の独白は、跡部視点でも樺地視点でも。

私的には跡部視点のつもり。

ただどっちにもとれるかなぁと。

Ｑ．最後跡部さんは樺地に何したの？

分からないお嬢様は樺地です。

分かってしまったお姉様方は跡部さんです←どういう区分！？

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