2月某日のインタビュー。

 

 

 

 

忍足「インタビュー?何の?」

日吉「『クレマチス』です。バレンタイン特集号を作ることになりまして」

忍足「へー…ってあれ?内の部員の好みとか、なんや好きな食べ物とかは前にもインタビュー受けたで?」

日吉「いえ…今回は跡部部長特集です」

忍足「跡部特集!?」

日吉「ええ。今回の質問の内容は…コレです。『他人から見る跡部様の好み』」

忍足「はあ!?なんや、それ」

日吉「跡部部長ファンが現在気になっている質問の一つです」

忍足「ええ?何で俺なん!?」

日吉「忍足さんなら分かるかと思いまして。適当でいいですから」

忍足「や、そう言われてもなあ・・・跡部の好みなんて何とも言えんし。樺地に聞いた方が早いんとちゃうん?」

日吉「・・・あいつは今部の資料整理に忙しいんです。こんな下らない質問に答えるよりはそっちの方が有意義ですし」

忍足「なるほどなぁ。まあ・・・樺地がそんな詳しく答えるとも思えんしな。それに、樺地に『跡部の好み』なんて聞くんは、なんか変やし?」

日吉「・・・」

忍足「やっぱあいつらはええラブロマンスしとるって、ホンマ。」

日吉「・・・・忍足さん」

忍足「ん?」

日吉「真面目に答えないと・・・この間部室に隠してた何かへんなゲーム、捨てますからね

忍足「なっ!何でしっとるん・・・!?」

日吉「ちなみにもう没収済みですから。そこのところよろしく。妙に肌色が多いなあと思いましたけど。それだけで猥褻物陳列罪と受け取ってもいいんですよねえ?」

忍足「・・・!!!日吉、お前・・・恐ろしい子!!!

 

 

 

 

 

 

 

宍戸「・・・で、何で俺なんだよ!」

日吉「もう適当でいいですから」

宍戸「知らねえよ跡部のことなんて!!」

日吉「ですから何でもいいんです!一言でも!!」

宍戸「だから無理だって・・・!」

鳳「宍戸さん、何日吉ともめてるんですか!?「無理」ってなんですか無理って!まさか日吉が宍戸さんにいけないプレイでも・・・!?まさか痴情のもつれ!?」

宍戸「適当な妄想膨らませんな!!!インタビューだよ!!」

鳳「ああ!日吉が苦い顔してるあの『特集』?大変だね」

日吉「丁度いい、お前も何か答えろ。『跡部部長の好みのタイプ』だ」

鳳「ええ〜?そんなこと言われても俺、跡部さんのことよく知らないし。樺地に聞けばいいのに」

宍戸「そりゃそうだ。全部樺地に聞けば一発じゃねえか。」

日吉「・・・」

 

 

 

 

 

向日「はあ〜!?俺そんなの知んねーし!」

日吉「お願いですから答えてください。本当にもう何でも良いですから

向日「って言われてもよ〜・・・あ!!そういえば前、『年上にもはっきりした意見が言える奴』とか言ってたぜ!」

日吉「へえ。」

向日「・・・でもよー」

日吉「はい?」

向日「・・・・何で、年下限定みたいな言い方するんだろーな」

日吉「・・・・・・・」

 

 

 

 

 

芥川「え〜・・・?何〜〜〜??」

日吉「ですから、跡部部長の好みのタイプ・・・」

芥川「そういえば跡部と言えばさ〜・・・あいつ髪の毛いい匂いするんだって〜」

日吉「・・・は?」

芥川「って樺地が言ってたC〜」

日吉「・・・いつ」

芥川「俺がおんぶされてるとき〜!樺地の髪の毛イイ匂いするから〜」

日吉「・・・?」

芥川「ふあ・・・あ、そういえばさ、日よC〜」

日吉「はい?変な呼び方やめてくださいね」

芥川「跡部さ、俺が樺地に降ろされた後、樺地の背中、ポンポンってするんだぜ〜」

日吉「・・・」

芥川「ほんっと・・・ひどE〜・・・・・ん・・・・zzz

日吉「・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日吉「インタビューお願いします!

滝「…どうしたの日吉、随分殺気立ってるね―――インタビューって、あれでしょ?『クレマチス』のバレンタイン跡部特集。そういやこの間の跡部へのインタビューのやつ、日吉の本音だだ漏れだったよ?」

日吉「いいんです、あれは編集長に許されましたから。」

滝「あ、そうなんだ?でもま、どっちにしたってこんなインタビュー断れば良かったのに。日吉も案外悪だよね」

日吉「…どういうことですか」

滝「だってもう分かってるじゃん?跡部の好みなんて―――その全般がどこに帰結するかも」

日吉「…」

滝「それなのにこうやって律儀に女の子のためにインタビューするわけだ。初めからその女の子たちに見込みがないって、知ってても?」

日吉「……仕事ですからね」

滝「まあね。下手に真実を知るより、夢を見ている人には一生夢のままの方が美しいし。『秘すれば花なり』っていうのも、あながち関連性が無い訳じゃないんだろうね」

日吉「…何が言いたいんですか」

 

滝「…樺地は日吉が思うより、強いよ」

日吉「…!」

 

滝「跡部の事なんて、樺地に聞けば一発なのに。それをしないのは跡部ファンの女の子のためのバレンタイン特集で樺地を裏切るみたいだったから?」

日吉「そんなことは・・・」

滝「だって部活資料なんて今やらなくても別にいいじゃん。樺地不思議がってたよ?」

日吉「・・・」

滝「日吉。樺地はね、何十年も跡部の傍に居て、跡部の人気なんか身に沁みて分かってるんだよ。今さら日吉が隠そうとしたって意味ないんだよ」

日吉「・・・。――――俺は、あいつだけが知ってる跡部部長の素顔を、聞きたくないだけです」

滝「?」

 

日吉「あいつは聞けばなんでも喋っちまう、そういう奴なんだって最近分かりました。

今でさえ跡部部長の想いは誰に聞いてもダダ漏れのようですけど、でもきっと、跡部部長はあいつの前だからこそ、見せられる・・・曝け出せる、本当の素顔があるんだと思うんです。たぶん聞けば、あいつは何もかも隠さずに言ってしまう。」

 

 

滝「・・・そこだけは、跡部のために聞かない方がいいと思った?」

日吉「自分のためですよ。ふだんでさえ惚気られてるようなものなのに、これ以上惚気られたらたまったもんじゃありません。」

滝「はは!そう来たか。うん、確かにね。樺地に聞くわけにはいかないかもね」

日吉「・・・じゃ、インタビューに移っていいですか」

滝「いいけど―――その前に一つだけ、いい?」

日吉「はい?」

 

 

滝「僕、日吉のそういうところ、嫌いじゃないよ」

 

日吉「―――――は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(優しさよ、ああ、花となれ)

 

(秘めたれた美しさは匂い立つのだから)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(滝「バレンタインだからね。先輩が後輩に甘くなってもいいんだよ」)

(日吉「〜〜〜〜!」)