(なんやかんやあって、←

樺地が跡部さんに告白したらしいです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……は?」

 

 

 

 

 この日跡部景吾は、自分でも生まれて初めて聞くような間の抜けた声を出してしまったと言う。

 

 それもその筈だ。

 

 

 何故なら。

 

 

 

 

 10年以上も一緒に居た同性の幼馴染から、まさに『愛の告白』とやらを受けてしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

限りなく 透明近く

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……どうすればいい。」

 

 秋を目前に控えたその日は荒涼とした涼しい風が教室に吹き込んでいて、今まで夏特有の熱地獄をくらった生徒たちは心地よさにはしゃいでいた。空を高く感じるようになり、部活にも一層熱を入れようと誰もが考えたその日のお昼休み、教室の雰囲気とは正反対に鬱々とした跡部の表情は、まさに部員を驚かせた。

 

 「…って、何が?」

 

 中三の時に全員でお昼御飯を食べるのが習慣になってから、高等部でも自然と集まって食べるようになった跡部と愉快な仲間達だったが、突然の跡部の言葉に対処できるほど免疫がついた訳ではない。

 比較的跡部と喋ることのある忍足が答えると、跡部は苦虫を噛み潰したような顔をして黙り込んでしまった。

 

 「何だよ!?言いたいことがあるなら早く言えってんだよ!!」

 

 遠まわしな事は嫌いな宍戸が跡部に吠える。何時もならそんな短気な宍戸を宥める長身の後輩が居るのだが、生憎と彼は中等部に所属しているためわざわざ高等部の校舎までは来ない。

 誰もが宍戸の言葉に頷く中、跡部は何とも言い難い苦悩の表情で口を開いた。

 

 

 「……樺地が」

 「樺地?樺地がどうかしたのかよ?」

 

 跡部の苦悩の表情からは想像できない名前が出てきたので向日は驚きながらお弁当の唐揚げを頬張る。跡部が樺地の事を話す時は樺地の何かを自慢するときか、昔話をするときで、こんな風に苦悩の表情で話すことは全くと言っていいほどなかった。

 さてどんな話が出てくるのか、と全員がとうとう好奇心を顕わにした時、何回も口を開いては結び、中々言おうとはしなかった跡部が、軽くこぶしを握って、とうとう意を決して口を大きく開いた。

 

 

 

 「…俺様に、」

 

 

 うんうん、と跡部を見つめたまま全員が頷く様子ははたから見ると異様であった。

 ただ、部員たちは進路指導のための面接室を借りてお弁当を広げているので、人目を憚る必要がなかったのだ。

 

 

 「………こ、」

 「「「「「こ?」」」」」

 「こく、」

 「「「「「こく?」」」」」

 「は」

 「「「「「は?」」」」」

 

 「……だあああああああああああ!てめえら一々うるせえんだよ!!」

 「んなのてめえが早く喋らねえからだろうが!!!」

 

 

 とうとう異様に緊迫したこの雰囲気に痺れを切らしたのか、バン、と跡部が立ち上がると、またしてもまどろっこしい事の苦手な宍戸が食ってかかった。

 全員も異様な雰囲気からの解放からか、「なんだよ〜」とか言いながらため息をついている。

 が、ここで忍足が陽光に反射してキラリと光る伊達眼鏡を中指で持ち上げながらニヤリと笑い、こう言った。

 

 

 

 「告白、やな?」

 

 「…」

 

 「樺地からやろ?」

 

 

 

 忍足の眼鏡がまたも怪しく光る。

 そしてその瞬間、世界が固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………っ、えええええええええええええええええええええーーーーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして面接室から響いた4人の叫び声が、その昼の氷帝学園の校舎を揺らしたなど、面接室に居たメンバーは知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ま、マジかよ!ってゆーかなんで侑士分かったわけ!?」

 「岳人…。跡部、樺地、そして『こくは』まで来てこの俺が分からんわけがない」

 「何でそこに『跡部』と『樺地』要素が入って確定してんだよ!」

 「なんや宍戸。『宍戸』、『鳳』、そして『こくは』でも結果は≪告白≫やで?」

 「だああああああ!!!!!うるせえええええ!!!!」

 「ってゆーかマジマジスッゲー!樺地の意外性にビックリだCー!」

 「ジロー、そんな無理したように口調つけなくても…。それにしてもほんとに樺地からとは意外だったね。樺地も結構やるねー」

 「滝も無茶してつけてるCー…」

 

 

 

 狭い面接室内の温度が急激に上がったため―――いやそれ以外の要因も勿論あるのだが―――真っ赤になった跡部の顔は、多分部員全員が今までに見たことのない顔だった。

 そんなレアな顔を見てしまっては部員たちのテンションは益々上がってしまう。

 まあ男子に限るわけでもないが、人間とはそういう生き物なのである。 

 

 

 「黙れ!俺はお前らに囃されるためにこんな話をしたんじゃない!!」

 

 とうとう雰囲気に耐えられなくなった跡部が部員達に吠えた。

 と、それを受けた部員たちは我に返り、元の席に着く。

 

 「そっか、これから大変やもんなあ」

 「跡部、OKすんのかよ」

 「っつーかマジおかしいだろ…」

 「宍戸!アカンで、そないなこと言うたら鳳が可哀想や」

 「アイツは関係ねーだろ!!!!」

 「でも樺地と居づらくなる跡部って想像つかないCー」

 「いつも一緒だったからね…面白いことになりそう…かな」

 

 

 「「「「「で、どうするんだ(や)?」」」」」

 

 

 「どうって…」

 

 

 部員全員に迫られ、跡部はまた珍しくも言いにくそうに視線をそらす。

 普段は何があろうと目をそらさずに立ち向かう(ex.気絶してても君臨する)屈強の精神を持つこの男が、まるで問題から背を向けるようなこの態度は新鮮に映り、つくづく部員たちは樺地の偉大さを実感した。

 

 「ってゆうか…跡部、お前樺地の事どないに思ってん?」

 

 このままだと沈黙したままの状態になりかねない跡部を、救いの手を差し伸べるように忍足が言う。

 その言葉に跡部は机の上に手を組み眉間にしわを寄せながらも、ゆっくりと口を開いた。

 

 「大事な奴だとは思ってる、けど・…」

 「けど?」

 

 反語で聞き返した向日は、より一層机に身を乗り出し、忍足に戻された。

 

 「…そんな風には、考えられねえよ」

 

 ポツリ、と漏らされた言葉に、まあ確かに、と全員は息をついた。

 が、尚も忍足は追及する。

 

 「けど、ならなんでお前いつも樺地連れて歩いてん。そこに何某の感情も無かったとしても、樺地にそう言わせるくらいの何かはあったんちゃうん?」

 「別にそんな事は…」

 

 ねえよ、と呟こうとして跡部は口を閉じた。

 

 確かに近すぎた距離感を持っていたことは、跡部自身自覚していたのだ。

 何かを呟けばすぐに届く位置。ただ、それはいつも後ろか横かでずっとくっついていて。

 けれど告白されたとき、樺地と跡部は向き合っていた。初めての位置。目の前。

 多分樺地が望んでいるのはそう言う事だ。どの視点に居ても自然でいられる関係。それが例え前だとしても。

 だが跡部には無理だった。

 いつでも傍に居ることを意識していながら、実際は見ていなかったのかもしれない。

 樺地がそこに居ること。そしてその『樺地』という人間の存在を無視に近い形で捕らえていたのかもしれない。

 

 その状態を変えて、いきなり意識しろと言う方が無理な話なのだ。

 跡部はそう考えている。

 

 

 「…無理、なんだよ」

 

 跡部がそう呟くと、全員がその突拍子のない言葉に目を丸くした。

 

 「今更、何年も一緒に居て、そういう風に捕えるなんて、俺には無理だ」

 

 急に静かになった部屋に、跡部の暗い声が寂しく響く。

 

 

 「…せやな」

 

 

 何の抑揚もない忍足の声が跡部に応えた時、昼の予鈴が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+  +  +

 

 

 

 

 

 

 

 「なーんか…納得いかねー」

 

 

 部活からの帰り道、家から持ってきたために既に温くなっている2Lのスポーツドリンクを飲みながら、突然向日は呟く。

 沈黙していた空気の中に突然投げ出されたその言葉の意味を、けれども忍足は読み取った。

 

 誰もがどこかで信じていたのかもしれない。

 何時も一緒に居る跡部と樺地。それがあまりにも見慣れた光景だったから。

 まるでお別れのように、離れてほしくなかったのだろう。

 

 跡部の言葉を聞いたあと、あの場に居た全員の顔は暗かった。

 

 「仕方ないっちゃ、そうなんだけどよー」

 「…せやなあ」

 「跡部と樺地には、なんつーか、一緒に居てほしかったかも」

 

 俯きながら話す岳人の様子を、忍足は眉を下げて微笑んで見ていた。

 

 「…跡部が決めたこと、やからなあ」

 

 実際、忍足も心のどこかで願っていた。世の中の恋が全部小説のように上手くいく訳ではない。けれどもそういった理屈を抜きにしても、やはりあの二人は傍に居てほしかった。

 

 「それもさー、今日跡部、樺地と帰らないようにリムジン呼んでんだぜ?俺、なんか、すっげー切なくなっちゃ…」

 「岳人」

 

 声が震えてきた岳人の手を引いて、忍足はその小さな体を抱きしめた。

 

 「ゆー、し」

 「…泣くなや」

 「っ、泣いてねーし」

 

 ピクリと体を揺らすも、忍足の腕から逃れようと身をよじる向日に、忍足はさらに腕に力を込めた。

 

 「じゃあ…俺、泣いてもええ?」

 「え、」

 「ちょっと、泣きたい…」

 「…」

 

 忍足の腕をどかそうと掴んでいた向日の手から、力が抜ける。

 と、その腕が忍足の背中に回った。

 

 

 「…いいぜ、ゆーし。泣けよ」

 「……おおきに、」

 

 

 忍足の優しさを感じて、向日は泣きそうになった。

 

 こんなにも近くに居るのに、きっと、この温もりもいつかは離れてしまう。

 

 

 

 

 

 物語のように上手くいかないと知っていても

 

 それでも、幸せな展開を望んでた

 

 

 

 

 

 

 

 

+  +  +

 

 

 

 

 

 「今日結構ムカつく事があったんだよね」

 

 奢ってあげるからちょっと付き合わない、と微笑みながら言った先輩は、その顔立ちや雰囲気に似合わない食べ物を食べながら苛立たしげにそう言った。

 

 「…あなたに、こういう場所は似合わないような気がしますけど」

 「うん、それがさー。ここって食べて飲んでも300円以内で済んじゃうんだって。すごくない?」

 

 はあ、と適当に頷けば、先輩は微笑んで、視点を俺から窓の外へと移した。

 

 「イラつかない?日吉はさ、鈍いやつとか、どんくさいやつとか」

 

 呼ばれて、何の事かと思えば部活の話なのだろうか。

 今日の部活を振り返りながら、一応意見を言うために口を開く。

 

 「中学生は、そんなのばっかりですよ」

 

 すると、滝さんは驚いたような顔で振り返り、思いついたように笑った。

 

 「ああ、そっちじゃなくて。ボールがとれないとか、部活の話じゃないんだけどね」

 

 じゃあ何の話なんだ。

 この人の話は結構突飛なので、とりあえず黙ると、「ありがとうございましたー!」と明るい笑顔でいうお姉さんの声が聞こえてきて、滝さんもそちらに目を向けたようだった。

 

 「―――まさにあんな感じ。ま、あれは0円で売ってるっていう商売道具なんだろうけど」

 「・・・0円のスマイルをそんな風に言う人初めて見ましたよ」

 

 まるで見下すかのような目線をしている先輩に、一応言ってみる。

 と、滝さんの視点がこちらに移動した。

 

 「ああいう風にさ、笑っていながらも本当は別のこと考えてるって、怖いよね」

 「…ええ、まあ」

 「でもさ、そう言う風に装っていながら、結局自分の本当の気持ちに気付いてない馬鹿見てると、腹が立たない?」

 「…何の話なんですか、それ」

 

 話がどんどんと違う方向にずれていくので聞いてみると、その人は溜息をついた。

 

 「どうして気付かないのかなあ、本当は依存してるのが相手なんじゃなくて、自分のほうだってことに」

 

 

 「荒れるかもね――――そっちも」

 

 

 

 最後の一言に思い当たることがあって、俺は震えた。

 そうか、あの話か。あのデカイあいつが言ってた、アレか。

 

 

 「…こっちに迷惑かけないよう、言っておいてくださいよ」

 「無理。多分あの感じだと、アイツ自滅するからさ」

 

 自滅のイメージがない男の姿を思い浮かべて、首をかしげた。

 

 「自滅?」

 「――――うん。だってさあ」

 

 

 

 そして妖艶にほほ笑んだその人の顔は、やはりこの陽気な場所には恐ろしく合わない気がした。

 

 

 

 「自分で自分の好きな人見失っちゃったら、どうしようもないでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき(反転表示です)←携帯の人にはとても優しくない感じ

 

 

 

えーーーーーーーー・・・・

こんなところで終っちゃうの!?みたいな終わり方。すみません。

ネタだけをうpしたかったので・・・

さーこのあとどうなるの!?

どうなるのかしら・・・・・←ちょ!

ってゆーか、忍岳なかよくし過ぎじゃねえ!?

 

結末が気になる方は拍手でどうぞ!おしてみそ!

ただし、結末は教えないけどねっ!(じゃあ押さないわ!)

 

 

えー・・・毎度毎度文章力欠乏症の書く話で本当にすみません・・・。

 

 

 

 

6000hit、本当にありがとうございましたああああああああっ!!!!!